宮崎駿の原点&バトンの継承 三鷹の森ジブリ美術館企画展示「挿絵が僕らにくれたもの」展-通俗文化の源流-

(2012年4月6日~4月7日、5月13日、6月1日、6月5日~6月6日、6月11日、7月1日、9月10日のツイート)

YouTube-"ジブリ美術館、特別展「挿絵が僕らにくれたもの」=ジブリ作品の原点"

三鷹の森ジブリ美術館 - 企画展示『挿絵が僕らにくれたもの』展
【展示期間】2012年6月2日(土)~2013年5月20日(月)
スタジオジブリ作品の原点はここにあった!宮崎駿監督自らコメント&イラスト付きで紹介!ジブリ美術館新企画展示 - シネマトゥデイ
朝日新聞デジタル:挿絵が僕らにくれたもの - 小原篤のアニマゲ丼 - 映画・音楽・芸能
セブンネットのネット通販 - スタジオジブリ専門店 特集「挿絵が僕らにくれたもの」
三鷹の森ジブリ美術館 - 西岡事務局長の週刊「挿絵展」


「小さな妖精と食料品屋」『ももいろの童話集』より 画:H.J.フォード

 「イギリス・ヴィクトリア時代の童話集のシリーズ(アンドルー・ラング世界童話集)には、面白い挿絵がたくさん入っています。イギリスの挿絵の全盛時代はこのころです。当時の一流の画家たちが挿絵を描いている。それを見せる意味もあるだろうということで、復刻されたものだと思います」
 「たとえば『ももいろの童話集』に入っているお話の挿絵。これは貧乏な学生が、自分の食事もけずって古い詩の本を夢中になって読んでいるところを、鍵穴からゴブリンがのぞきこむとこういうのが見えた、っていう絵なんです(上図)。いいでしょう?よく見るとちょっと気持ち悪いんですけど。こわいけど、やっぱりこの絵があることによって、この短いアンデルセンのお話がとても強く印象に残っていきます」
宮崎駿『本へのとびら――岩波少年文庫を語る』


『うるわしのワシリーサ』
≪赤い騎士が目の前を横切っていきました≫画:イワン・ビリービン

ビリービンとロシア絵本の黄金時代

 「ロシアの昔話絵本の挿絵も紹介します。画家であり、舞台美術なども手がけていた、イワン・ヤコヴレーヴィッチ・ビリービン(1876~1942)」「僕は1971年頃、『長くつ下のピッピ』を映画にするべく準備しているときに初めて目にし、とても感銘を受けました。その後のアニメーション制作において、とても参考になった挿絵です」
(“「挿絵が僕らにくれたもの」展”パンフレット)


『うるわしのワシリーサ』
≪臼に乗って現れたヤガー婆≫画:イワン・ビリービン

 「画面を占めている枯枝が、ロシアにも自生し深い森をつくっている“トウヒ”だとわかります。少ない線と色で端的に表現されているからでしょう。僕の理想です」
(“「挿絵が僕らにくれたもの」展”パンフレット)

The Lady of Shalott
J.W.ウォーターハウス 『シャーロット姫』

 「娘の顔じゃないんです。表情じゃなく周りの風景なんです。水も、空気も、植物も、見事ですよね、ほんとうに。これはアニメーションの背景としては最高だと思った。アニメーションで僕らがやろうとしてきたことが、100年も前の画家がここでやっているんだと。キャラクターについてはいろいろ好みもあるだろうけど、それに惹かれたんじゃないです」
 「人間に従属させて後ろの風景をひょいひょいと描いちゃうんじゃなくて、現実を写し取る、つまり風景をきちんと尊重して、その中に自分たちのヒロインやヒーローを置こうという新しい時代に対する胎動なんですよね、多分。何かうごめいているんだと思う。でも、だんだんそうじゃなくなる。19世紀終わりの印象派からそうじゃなくなるんです」
(『熱風』2012年9号 特集【三鷹の森ジブリ美術館企画展示「挿絵が僕らにくれたもの」展-通俗文化の源流-】宮崎駿インタビュー「高潔さや美を含む通俗性」)

沙漠の魔王
福島鉄次『沙漠の魔王』

 「「冒険王」という昔の雑誌に、どぎつい四色刷りで、福島鉄次という人が描いた「沙漠の魔王」という絵物語が載っていたんです。ある王様が、あまりに悪逆を働いたために、魔力によって香炉に封じ込められてしまう。それが、ある香木を焚くと魔王が復活し、その香木を焚いた人間の命令に従うという、わけのわかんない(笑)話なんですが、戦車だの、乗り物だの、そこに描かれた絵がおもしろくて、小学校の四年から五年までの二年間、ぼくはそれをドキドキしながら読んでたんです。ためつすがめつね。じつは、何を隠そう、そこに石を持つと飛べるという話が出てくるんです。ひとつの宝石で、それを持っていると飛べるんです。だから、あんまりオリジナルを主張はできないんですよ(笑)。けど、福島鉄次が飛行石を考えだしたのかといえば、それはちがいます。魔法のじゅうたん、羽のはえた靴と、昔からその種のものはいくつでもあるわけです。
 つまり、通俗文化はほとんどがアレンジにアレンジを重ねていくのが特徴であって、新しいものを提示することに意味があるわけではないと思うんです。むしろ、子どものときに自分がワクワクしたものが、なぜいまないんだろう、昔ワクワクしたものを、いまそのまま持ってきてもダメだけど、いまのことばでそれをしゃべればいいんじゃないかと思うわけです」
(『アニメージュ特別編集 ロマンアルバム 映画天空の城ラピュタ GUIDE BOOK』所収 宮崎駿インタビュー「時代を超えていく通俗文化を作りたい」)

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 「通俗文化は、リレーのようなものだと思っています。『風の谷のナウシカ』の巨神兵も、その肩に立つ少女も、ぼくの独創とはいえません。いろいろな形で描かれて来たものを、絵物語を通して受けとったのです。リレーのバトンがなければ描けなかったでしょう。絵物語もラングも様々なバトンを受けとったのです。映画も小説もまたそうでしょう。
 たどっていくと人類の歴史みたいになってしまいますが、とりあえずの先祖として、ぼくは『ラング童話集』の挿絵と、『シャーロット姫』が、はじまりと決めました。それを知ったのは、60才もすぎてからでした。
 ぼくは、弟子の弟子の、又弟子だったのです」
セブンネットのネット通販 - スタジオジブリ専門店 特集「挿絵が僕らにくれたもの」

鈴木敏夫のジブリ汗まみれ -TOKYO FM 80.0- 鈴木敏夫 2012/08/23 夢枕獏ジブリ美術館を歩く!

鈴木:この展示で宮崎は、僕のルーツとか僕はこうして生まれたみたいなことを書いていますが、自分の過去をちょっとねつ造してると僕は思うんですよ(笑)
夢枕:そうなんですか!どの辺が…?
鈴木:たぶんこの挿絵にも影響を受けているだろうなと思い当たる絵が他にもあるのですが、そういうのを出さないんですよね。この展示にはありませんでした。
夢枕:出すと恥ずかしいんでしょうか?
鈴木:どうなんでしょうか。でも、ある本の挿絵を観た時に僕は気づきましたね。ナウシカ[注、漫画版]の線などは、「イギリスの作家のこの絵をまねたんだなぁ」と思いました。本人に言うと怒られるんでしょうけどね(笑)。
夢枕:誰だろうなぁ?怒るということは当たってるんでしょうね、たぶん。でも、僕は宮崎さんがナウシカなどで描かれるモノクロの漫画の線が好きなんですよ。一本一本の線の始めと終わりの太さがあまり変わらないところが。
鈴木:僕はほかに、『未来少年コナン』を初めて観た時にびっくりしたんです。「あ、杉浦茂の作品世界と同じだ」と思って。わかっちゃったんですよ。僕はまだ彼にちゃんと会ったことがなかった頃なんですけど。
夢枕:ははあ、それはご本人に言ったんですか?
鈴木:ええ、本人は杉浦茂が大好きだから「そうなんですよ」と言いました。それで僕と彼は通じあえたんです。
(“「挿絵が僕らにくれたもの」展”パンフレット)


メアリー・ノートン『床下の小人たち』より 画:ディアナ・スタンレイ

鈴木敏夫:『床下の小人たち』これを僕は読んだことがなかったんで、今回初めて読んだんですけどね、この本なんかも、あのー最初ね宮さんがね、この絵(上図)のことなんかをよく覚えていたんですけどね、「鈴木さんこれ良いでしょ」って僕にみせてくれてね、それでこうやって見ていたんですよ、で見ながらね、僕あることに気が付いたんですよね。「あれ?」って思ったんです。この絵の描き方は…宮さん影響受けてるなって(笑)。これね、あのー、何で描いたかはともかく、この線、あの宮さんの線ってね、線を描くときに「ビュッ」って描かないんですよ。ゆっくり描くんですよね。そうするとね、いわゆる絵において線って大事だっていわれるじゃないですか。線が宮さんの絵に似てるんですよ。これが一個ね。それと、この、なんていうんだ、人間のしぐさ。まあ、これは彼、高校時代から大学時代にかけて毎日のように井の頭公園に行って、それで人を観たり、動物を観て、そのスケッチ何枚も描いたみたいで、そのポーズに関してはずいぶん頭の中に入ってるみたいですけれどね、このポーズの描き方もある種の影響がある。それと、最大のポイント、このバックの斜線の描き方…これナウシカなんですよ原作の(笑)。こんなこといっちゃったら、宮さん怒るかもしれないけどね、この挿絵を見たときにね、あ、なーんだ宮さんって、この挿絵のね、影響を受けてずいぶんと絵を描いたんだなあっていうことがね、なんかわかっちゃったんですよ(笑)。
(『ジブリの本棚』)


ペップ出版『杉浦茂ワンダーランド5 猿飛佐助

 「僕には今年9つになる小学生の友人がいます。彼が2年生のときに、ある日突然「本をあげたいな」と思ったんです。1年生のときには「犬棒かるた」をプレゼントしているんです。今度は本にしたいと。ところが適当な本が思い浮かばない。なにしろ図書館の本を片っ端から借りて読んでいるような子どもなので、児童文学の名作といわれるものは身近なところにあるわけですよ。
 そこでさんざん考えた挙句「これしかなかろう」と、ペップ出版から出ていた杉浦茂さんの単行本の表紙や解説ページを取り去って自分で上製本につくりしなおしたものをあげたんです。
 どうして杉浦茂だったのか、と言えば、先ず第一に言葉が豊富なんですよ。1年生で犬棒かるたを覚えて、家に来ていた大工さんが「いそがしい」って言うと「びんぼうひまなしだね」って応えるような子どもだから、きっと杉浦茂のセリフも喜んでくれるだろうと思った」
 「渡したときの気持ちとしては、「バトンは渡したぞ」ってかんじ(笑)。杉浦茂に関してはこのときに責任を果たした、と思っているんです。これが、僕の杉浦さんに対する最大の賛辞です。杉浦茂は古びないんです。稀有な人ですよ。でも、僕がそれを褒め称えるんじゃなくて、最大の賛辞として若い友人に贈ったってことなんです」
中野晴行編『杉浦茂の摩訶不思議世界 へんなの……』所収 宮崎駿インタビュー「杉浦バトンを若い友人に渡した」)

宮崎駿監督『崖の上のポニョ』『パン種とタマゴ姫』に影響を与えた絵画作品
Google Art Project 紫の豚24選
宮崎駿『本へのとびら―岩波少年文庫を語る』
『シャーロット姫』と『崖の上のポニョ』
■巨匠の力業 ジブリ美術館短編映画 宮崎駿監督『パン種とタマゴ姫』
■児童文学のススメ 「宮崎駿が選んだ50冊の直筆推薦文展」


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