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西岡純一広報部長に訊くスタジオジブリの現状



2018年3月8日木曜、雨降りの夜、
参加費無料、誰でも参加可能の特別講座、
御茶ノ水のビルにて、聴講してきました。

講義が始まる少し前に教室に入ると、
登壇者のスタジオジブリ西岡純一広報部長と
東映アニメーション本間修製作開発室長が
楽しそうに雑談されていました。

あまり周知されていなかったのでしょうか、
正確には数えてはいませんが、受講者は20人程度。
途中から入ってきた人もいましたが、
30人は超えていなかったと思います。

3人のアニメ業界人からお話を聴く。
少しだけでもジブリ最新情報を知ることができれば、
と思ってはいましたが、司会の方が「今話せることは?」と
興味津々で食い下がり気味に私の代わりに訊いてくれたので(笑)、
西岡さんもジブリの現状をずいぶんと喋ってくれました。

スタジオジブリの現状の金稼ぎの手段は、
「商品、海外展開、展覧会」の3つだそうです。
ジブリ関連の展覧会を日本全国・海外でも頻繁に
開催している背景はここにあるんだなと思いました。

鈴木敏夫プロデューサーが以前言っていた、
宮崎駿監督が現在制作中の『君たちはどう生きるか』では、
製作委員会方式を解消する。大宣伝はやめる。
これを西岡さんも繰り返し言っていました。
「製作費(制作費?)は100%ジブリが出す」
これまで何十億円もかけてきた膨大な宣伝をやめることで、
風立ちぬかぐや姫の物語のときに
1本50億円まで膨らんだ製作費を、
『君たちはどう生きるか』では、ジブリの自主制作映画ですから、
かかる費用をできるだけ抑える意図があるのかもしれません。

製作委員会方式を採らない
出資100%の自主制作映画といえば、
庵野秀明監督が株式会社カラーで作っている
ヱヴァンゲリヲン新劇場版シリーズもそうです。
ジブリがカラーを見習ったということでしょうか。
会社より人間関係を大切にするジブリですから、
今まで製作・宣伝面で大きくジブリを支えてくれた
日本テレビの氏家齊一郎会長が亡くなり、
公私混同でジブリと長年付き合ってきた
同じく日テレの奥田誠治さんが松竹に移った
ことも要因として強いのかもしれません。
もちろん「エヴァ」だから可能であるのと同じように、
「宮崎駿監督作品」だからこそ可能だと踏んだのでしょう。
西岡さんによれば、鈴木敏夫プロデューサーは
ネットフリックスをあてにしている」らしいので、
『君たちはどう生きるか』はしがらみがないことにより、
スタジオジブリ作品としては異例のWEB配信、
果ては全世界同時公開が可能になるかもしれません。

「宮崎駿の映画のために誰か100億円ぐらい出してくれないかな」と、
これも鈴木敏夫プロデューサーが以前言っていたことですが、
西岡さんによると、鈴木敏夫プロデューサーは最近、
ビットコインのような仮想通貨に興味を持っているそうです。
「仮想通貨を発行して、お金集めができないか」
仮想通貨で資金調達する「ICO」(Initial Coin Offering)は、
国内外にいるファンから直接支援を受ける手段として良さそうですが、
いろいろクリアすべき事がまだ多そうで、実際やるとなったら、なにか
問題が起こるのではないかという不安がありますね(笑)。
ブログ、YouTube、ニコ生、ツイッター、LINE(LIVE)など、
流行り物をこれまで割と積極的に採り入れてきたジブリですけれど、
仮想通貨にまで手を伸ばそうとしているのにはさすがに驚きました。

昨年のスタジオジブリ新人募集で採用された
アニメーター11人(動画6名、背景美術5名)の内、
男性は1人だけで、宮崎駿監督の選り好みで女性ばかり
選ばれたのではないかという疑念が湧きかねませんが、
西岡さんの話では、応募の段階から女性ばかりで、
男性からの応募は本当に少なかったそうです。
具体的な数値を西岡さんは挙げていましたが、
信じ難い男女比でした(本当?)。
西ジブリのときに採用されたメンバーにも
女性が多かったのを思い出しますけど、
だいぶ前からこの傾向は続いているそうです。

『君たちはどう生きるか』の制作状況。
宮崎駿監督は絵コンテを描いていますが、
まだ「あまり作り始めていない」そうです。
絵コンテの進捗状況も「半分ぐらい(終わった)かな」とのことで、
『なごみ 2017年12月号』「問答後談 鈴木敏夫の今月の自画自賛」
鈴木敏夫プロデューサーが報告していた状況から変わっていませんでした。
「宮崎駿の好きなように作らせる」方針で、
「公開日も決めていない」そうです。
「研修中の新人の動画試験が今週か来週にある」と
西岡さんはおっしゃっていましたが、それに合格しても、
「よその作品を手伝いながら本番に備える」とのことで
制作の本格化はまだみたいです。昨年の12月だったと思いますが、
NHKのラジオ番組に鈴木敏夫プロデューサーが出演したときに、
「宮崎駿の新作はまだスタッフ集めの段階」と言っていたのを思い出しました。
スタジオジブリ新人の契約期間は「2017年10月1日からの3年間」と
なっていますが、だからといって2020年に
映画が完成する保証があるわけではありません。
さらに制作が長期化する可能性もあると思います。
途中で制作中止になるかもしれませんし、長編はやめて中編あるいは、
ジブリ美術館の短編制作に切り替わることだってあるかもしれません。

宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』では
流行りのタブレットを使ったデジタル作画ではなく、
スタジオジブリがその最後の一社になってもいいから、
「紙と鉛筆を使った手描きによる作画」にこだわるそうです。
「まだ作画に入っていないからわからないけれど」とのことでしたが、
「『毛虫のボロ』で使ったCGスタッフを
『君たちはどう生きるか』でも使うかもしれない」、
『毛虫のボロ』は最終的には結構手描きになったそうですが、
そのCG制作を経験した宮崎駿監督はCGの得意分野を前より理解して、
むしろ「CGの分量は新作では増えるかもしれない」という見解を
西岡さんは述べていました。ただ「CGは撮影段階のソフトでも出来る」
とも言っていたので、先の「CGスタッフ」は
「3Dモデルでキャラクターを動かすCGスタッフ」ではなく、
「従来のジブリ作品にも参加していたような撮影(CG)スタッフ」
のことを指している可能性があります。

昨年の11月末、「ジブリ再始動」の報とともに
突如舞い込んできた、宮崎吾朗監督によるジブリ長編CG作品。
てっきり映画館で上映する劇場映画なのかと思い込んでいましたが、
西岡さんによると、現時点ではTVスペシャルを想定しているそうです
(例、スタジオカラー制作・NHK BSプレミアム放映『龍の歯医者』)。
「クオリティが良くなったら、劇場でやりませんか」という
話も出てきているそうですが、どうなるんでしょうか。

鈴木敏夫プロデューサーが
NHKのラジオ番組でこうも言っていたのを憶えています。
「宮崎駿の新作のスタッフと宮崎吾朗の新作のスタッフは顔を合わせない」
これはどういうことかというと、
CG制作会社ポリゴン・ピクチュアズに乗り込んで
3DCGアニメーション『山賊の娘ローニャ』を作ったときと同じように、
宮崎吾朗監督は外のCG会社と協力して
新作を制作している可能性があるということです。
NHKドキュメンタリー『終わらない人 宮崎駿』で話題騒然となったシーン、
ドワンゴの人工知能(AI)によるCG表現の事例紹介の場に
宮崎吾朗監督は同席していましたから、川上量生の会社と今度は
製作の面だけでなく実制作の面でも手を組んで作っているのかもしれません。
宮崎吾朗監督の新作の座組はジブリ×ドワンゴ×NHKでしょうか。
ジブリがCGスタジオを新設したという話があれば、面白いんですけどね。

ぴえろ、東映アニメーション、スタジオジブリの関係者の話を聴き、
それぞれアニメ制作会社としての性格が異なることはわかりましたが、
そのなかでも、やはりジブリは特殊すぎると思いました。
鈴木敏夫プロデューサーは「宮崎駿が死んだらジブリは消滅」、
宮崎駿監督は「鈴木さんが倒れたらジブリは終わり」と言っています。
「ジブリ再始動」といっても、永続的なものではありません。
創設者がいなくなって名前だけ残っても、それは違う「ジブリ」です。

高畑勲監督が『かぐや姫の物語』ドキュメンタリーの冒頭で
いみじくも言っていたように「いつだって最後の作品になりうる」。
2013年『風立ちぬ』公開後、
宮崎駿監督が長編引退宣言したあとに執筆していた
戦国時代マンガ『鉄炮侍 蛭子八郎太』の連載企画は中止になりました
短編映画『毛虫のボロ』はCGの出来に納得がいかず、
「ゴミみたいな作品になる可能性がある」として
あわや制作中止になりかけました。紆余曲折があったにせよ
『毛虫のボロ』(14分20秒)は2年半の歳月をかけてようやく完成し、
三鷹の森ジブリ美術館でそれを観ることができるだけでも僥倖です。
『君たちはどう生きるか』が完成して観れたら、それは奇跡みたいなものです。
「世界は神秘に満ちているんだと。それでおしまい(笑)」
宮崎駿監督が自作の『毛虫のボロ』について語った言葉ですが、
この作品が「宮崎駿の最後の作品」になってもいいと私は思っています。

講義の登壇者、ぴえろ最高顧問・布川郁司さんのことを
私はあまり存じ上げていなかったので、参加する前に
著書のクリィミーマミはなぜステッキで変身するのか?
おそ松さんの企画術の2冊を急いで読みました。
「ぴえろ」といえば、押井守監督がプロダクションIGで
作品を作るようになる前に在籍していたアニメ制作会社ですが、
その初代社長が布川さんで、元アニメーター・演出家という経歴の持ち主です。
「スタジオぴえろ」が歩んできた歴史を概観することができましたし、
アニメ制作会社は自転車操業、車輪を回転させ続ける経営のつらさが
文章から滲み出ていました。おそ松くんの作者・赤塚不二夫に対する
布川さんの思い入れも感じられ、とても興味深く読めました。

アニメ制作本数は過去最多。
マンガも出版社がWEBで公開するようになって、
作品数自体はとても増えているそうです。
布川さんが言っていました、「供給過多すぎる」。
同感でした。とても観きれないし、読みきれません。
過去の名作もまだまだ触れていませんし、時間もありません。
講義を受けるに当たって、『熱風 2016年12月号』掲載の寄稿文、
石井朋彦「テレビアニメは今どうなっている?」を
予習として読んできましたが、これは状況の把握に役立ちました。
西岡さんもここからの引用のようなことを言ってましたね。

講義の最後に質問タイムがありました。
私が躊躇、遠慮、様子見しているうちに、
3人くらい受け付けたあと、質問は打ち切られました。
後悔先に立たず。図々しく真っ先に手を挙げるべきでした。
とても貴重な話を聴けるいい機会でしたが、
このことだけが私の心残りとなりました。

宮崎駿監督「長編最新作」に触れた
鈴木敏夫著『ジブリの文学』の「あとがき」を読む。


theme : スタジオジブリ
genre : 映画

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